2010年11月10日水曜日

此処の所

リピートリピート.



素敵です.

安堂維子里 / 世界の合言葉は水 -安堂維子里作品集-

620 yen

ryu comics (徳間書店)

169 pages







水と生命をテーマとしたタイトル通りの短編集.全九編収録.
雰囲気としましては,五十嵐氏・漆原氏に似ているかなと感じました.

前述のお二方が幻想的フィクションを描かれるのに対し,
安堂氏は幻想的サイエンスフィクションを描かれている.

夢で見た風景を確りと現実的に描こうとされているのが分かります.
特に後半の四編が素晴らしい.母なる海と母なる宇宙.人は水.

汗だくになって,冷たい水をゴクリと飲み干す.生きているなぁ.
コタツに入って白湯を飲み.生き返りますなぁ.

妙な説得力で納得させられる.人は水で出来ている.
原理も構成要素も関係ない.視覚と台詞で包み込む様に納得させてくれます.


数エントリー前を書き直しました.お時間宜しければ,気分を害されなければ,
是非.

   

2010年11月7日日曜日

思い返して

赤面する事は多々あります.


marc rothemund (director) / 白バラの祈り -ゾフィー・シェル、最期の日々-

2005 released

120 min

federal republic of germany







合言葉は「どうしてこうなった!」である友人に勧められて観た映画です.
戦争映画は消耗が激しいのであまり観たく無い人間です.

以下は読む人によっては気分を害するかもしれませんので,ご注意下さい.

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主義・主張の衝突.時代の影響.
1943年,第二次世界大戦戦時下のドイツはミュンヘンが舞台.

白いバラの女性メンバーであるゾフィーは同じくメンバーである兄と,
ミュンヘン大学に反ナチズムを訴えるビラを巻くことから映画は始まる.

反ナチズム団体である白いバラの一員である女性ゾフィー.
彼女は自らの信念を貫き,ギロチンで首を落とされる.

ゾフィーは自由と非暴力を信念としていた.言論統制や大量虐殺を許せなかった.
罪を認めたゾフィーは尋問官に信念をぶちまける.虐殺・選民・戦争の無駄を.

尋問官は信念を捨てろ,そうすれば生きていられると答える.
彼は第一次大戦後,疲弊しきったドイツと現在(二次大戦中)のドイツを比較し,
現在の素晴らしさを語る.

両者の意見は至極真っ当で,納得するのである.
自由・平和.素晴らしい.飢えない・学べる.素晴らしい.

衣食足りて礼節を知る.その上に自由と平和はあるのだろうと尋問官は言う.
人の根底は神聖であり,善良であり,自由である.ゾフィーは言う.

自由とは何だろう.選択肢が多い事だろうか.可能性に賭けられる事だろうか.
その自由は法治されるが故に求める事ができる事象ではないのだろうか.

彼女が慟哭するシーンは信念と生への執着を真正面から捉えていて怖い.
処刑直前に現れ,無言でゾフィーを見つめた尋問官は社会性と愛の葛藤を写す.

戦争は愚かだ.自由も愚かだ.戦争とは何か,自由とは何かを考えさせられた.
正直,この映画を観終え,ゾフィーを素晴らしいと手放しで言う人は怖い.

個人が生きている社会において自由の範囲は規定され,
幸福の範囲も規定される.のか?

戦争が無いからこんな下らない事が考えていられる.
これが自由だ.か?


   

2010年11月2日火曜日

死ぬほど

冷静.な訳も無く.





桜庭 一樹 / 私の男


1,550 yen

文藝春秋

381 pages






何故,父娘は愛し合わなければならなかったのか.
何故,人を殺めてまで求め合わなければならなかったのか.

互いが求め合う事象は何か.愛か.肉欲か.庇護か.守護か.
現在から過去へと,全六章を通して,父娘を越えた愛と葛藤を探る.

以下は内容暴露と気分を害する恐れが有ります.ご了解頂いてお読み下さい.

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上記があらすじなのですが,読みたいとお思い頂けましたでしょうか.
そう思って頂けたら幸いです.是非書店へ.

本当に宜しいでしょうか.以下は本当に内容暴露で気分を害する恐れが有ります.

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九歳で家族を失った少女・花は遠縁の海上保安部に勤める二十五歳の男・淳悟.
実は花は荒れていた若き頃の淳悟の実の娘だった.

二人は親子として生活をするが,男女として愛し合い,依存し合う.
その関係を壊そうとする外部の人間を殺してまで二人は愛し合う.

北海道から東京まで二人は逃げ,そこでも外部の人間を殺す.
二人はこれでは破滅すると思い,花は結婚をし,淳悟は姿を消す.

テーマは血は水よりも濃い.だと思います.
時系列を遡る形式ですので,原因から結果ではなく,結果から原因となっています.

二人が共依存になった原因が全く分からない.二人が愛し合う原因が分からない.
凄い考えた.無い頭で考えた.

花は庇護者として淳悟を求める代償として,愛を母性を肉体を与えた.
求め続け,与え続ける事で淳悟に依存していったのかも知れません.

淳悟は父を亡くし,母に厳しく育てられた為に与えられなかった母性を求める為に,
花を母性として求めたのでしょう.また,庇護する事で愛する対象を得たのか.

そう推測はできるのです.しかし,そう推測した自分が全く持って面白く無い.
もう本当に合点がいかない.推測はするさ.そりゃ.分からないもん.

特に花.両親が死ぬ際に育ての父に愛されていると実感したにも関わらず,
出会った直後に淳悟を愛するお主は全くもって分からん.
つり橋効果か.後,何で殺した?動機が弱い.中学生だったから頭も弱いのか?

あと,淳悟.お前は暗い過去ってのは分かる.愛して欲しかったのよね.
でも,娘を代償とした葛藤が微妙だぞ.疲れたとか言ったらそれは霧散する.
母親に対する心的外傷見せろ.そこが一番お前の薄暗い部分だろ.

殺人を愛の証明として描くには情景が弱い.
理解はできるが,納得できる程の情景描写では無い.
無理矢理考えたけど,あれか.二人の閉じた関係には他者は必要ないって事か.
外的エネルギーが入らないからこそ,お前等の関係は破綻したんじゃないか?

お互い以外に信頼できる関係を築けなかったからこそ,淳悟は疲れたんじゃないか?
血が絆だと考えるなら,血の繋がらない父母は絆を持っていないことになるぞ.
エディプスコンプレックスか?書を捨てよ,町へ出ようか?コノヤロ.
ペドフィリアで芥川だから,近親相姦で直木か?バカヤロ.
もっとだ.もっと薄暗い部分魅せてくれ.葛藤してくれ.二人揃って首括るくらいの.